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そして僕は歩いていく

2009.08.26 - 二次:日和文
※Attention
・天国?
・転生に近い扱いですがその途中というか経過段階なので扱いをここにしています
・鬼男視点
・声の主の解釈はご自由にどうぞ
・元ネタあります
・タイトルセンスはありませんorz


グダグダと汚くてすみません。大丈夫そうな方は追記よりどうぞ!



『選んだ道をいく途中、懐かしいような誰かの声を聞いた』





気がつけば、ぽつりと一人ここに立っていた。
ぐるりと周りを見てみる。これといって目につくものはない。ただ、僕が歩いて来たんだろうずっと向こうの果てに、靄がかかったような緑色の「どこか」が見えた。
そこからずっと伸びてきてる「なにか」の上に、僕はいる。立っている。この二本の足で。
真っ白だった。ずっと、どこまでも真っ白で。遠くに見える緑の、靄がかかっている「どこか」以外、その「なにか」さえも。その「なにか」には縁取りがされてて、ちょうど僕ひとりが通れるくらいの幅があった。
ああ、これは道なのか。
そう考えた途端に、「なにか」は道になった。どこへ続くのかわからない、ただ白い白い先の空間までずっとずっと伸びている道。僕はそこに一人だけで立っていた。
あれ。と、思った。僕は、何かを忘れてきてやいないか?
けれど忘れてきたその何かを、思いだすことが、できない。

『ねえ』

声が聞こえた。この白い白い空間を揺らすような、けれど決して怖いとかそんなんじゃなくて、むしろ懐かしいような優しい声。
一体誰なんだろう。聞いたことがある声だと思う。いつどこでどんな時に聞いた声なのか、それはよく分からないのだけど。

『もし君の目が、この後ずっと、ずうっとどちらか見ることができるのなら、未来と過去のどちらを眺めたい?』

変なことを聞いてくる声だ。正直にそう思う。
そんな事を聞かれても、どう答えればいいんだって言うんだろう。
言葉に詰まっていると、声はまた問いかけてきた。

『どちらかだけ、見られるようにしてあげるから。さ、どっちがいいの?』

急かすような声に、僕は仕方なく考えてみる。
未来を見ることが出来るようになったら、きっとこの先何かを後悔しなくていいんだろう。
その「未来」が起こる前に、行動を起こせば済むんだから。
だったら過去を見ることが出来るようになったら、どうだろう。
過去は何回見ようと、その結末が変わることはない。たとえば大切なひとが悲しむことになった過去を何回みようとも、僕がその場で何とかすることなんか出来ない。もしかしたら、後悔ばっかりになるかも知れない。「過去」を生きた僕が。

「過去がいいです」

けれど僕は未来を選ぼうとは思わなかった。
先が見えないからこそ何かやろうとする気力が出るんじゃないかとか、同じ過ちを起こさないよう気をつけようと思えるからとか、そういう理由もあるけど。

『過去がいいの?未来を見ることができれば、何の過ちも侵さなくていいのに』
「そうでしょうね。けど僕はそんなものより思い出が欲しい」
『思い出…?』
「確かに僕がそこにあったんだっていう存在の証、って言うほど大それたものでもないでしょうけど。過去を見ることができたら、きっと「あの時はああだった」とか、「この時はこんなことがあった」とか、そういうものを感じたりできるんじゃないかって」

それを「思い出」というのだと、いつか誰かから聞いた気がしてた。
今は全然思い出せない、過去なのかも分からないどこかの時間で。今度はそれをずっと持っておきたかったから、きっと僕は過去を選んだんだろう。

『君らしいね』

声はまるで昔からの僕を知っているように呟いた。
その響きが寂しそうに聞こえたのは、僕の耳が変になっていたからなんだろうか。

『じゃあ、じゃあさ。君が向こうで不便しないように、色々なものをあげる。そうだね、心臓とか大事だよ。大事だから二つあげる。どうかな?』

どうかな、と言われて困る。
心臓がたくさんあっても、困るんじゃないだろうか。何が困るのかなんて分からないけど。
ただ、不便ではないんだろう。片方が病気になってももう片方が動けばいいものなんだろうし。

『それとも、心臓は二つも要らない?』

また、窺うように声は僕に問いかけてくる。
僕は答えた。

「心臓はひとつでいいです。それより僕はちゃんと泣けるようになりたい」
『泣けるように?』
「はい」
『泣いたら頭が痛くなるよ。目も痛くなるし、喉がカラカラするよ。声なんか枯れちゃうし、鼻づまりだって酷いし、顔もこう、くしゃくしゃになっちゃうよ?それでも君は泣けるようになりたいの?ほとんどの人は要らないって言って捨てちゃうのに、君は涙が欲しいって言うの?どうして?』

声はさっきの調子とうってかわって、矢継ぎ早に聞いてくる。
一個一個聞いてくれ、それこそ頭が痛くなるから。

「僕はきっと、最後の最後で泣けなかったからだと思います」
『泣けなかった?』
「ええ。最後の最後で」

ほとんど記憶とか思い出とか呼べるようなものを持ち合わせていない僕の中に、微かだけど残ってたものがある。
どこかの扉の前にいて、その扉から入った先にあるだろうその場所に、背中を向けている僕。
何を誰にいったのか分からない。
どう思ってどんな状況でいたかも思い出せない。
ただ分かるのは、扉をあけた。そして出ていった。それだけのはずなんだけど、その時に僕は何故だか目の奥がじりじりした気がしてならなかった。
そのじりじりはきっと、泣けなかった僕の涙が、ずっと奥で乾いたからじゃないかと。
だから。

「だから僕は、次こそ泣けるようになりたいんです。別に強く生きていきたい訳じゃなくて、泣きたい時には泣けるような涙が欲しい。それが優しいのかどうかなんて分からないけど、泣けなくて悔しいとか思うのは、嫌だから」
『そう』

声は落ち着いたみたいだった。
それ以上先を聞かなかった。

『じゃあ、全部君の望みどおりにしてあげる』

そしてしばらく後にそんな事をつぶやいた。
ちょっと不機嫌そうに、ちょっと寂しそうに。
怒らせちゃっただろうか。僕がわがままを言いすぎたから。

「あの」
『その代わり、絶対に幸せに生きてね。“オレ”が君を幸せにできなかった分だけ。絶対に絶対に幸せになって』
「あの」
『もうここのことは全部忘れても構わないから。それだけ約束してくれる?』

懐かしく聞こえた声が胸をざわつかせて、まだ在るわけがない心臓をどくどくと動かした。
目の奥の方がじりじりする。
あ、泣いてしまう。そんな事を考えるより先に、何かが頬を流れた気がした。

「わかり、ました」

何がどうなってるのか分からないけど、目の奥が熱いばかりだけど、それだけはなんとか言えた。

『なら、いいんだ』

声はやっぱり優しかった。
すごく懐かしいのに、何も思い出せないのに、ただ目の奥は熱くて仕方なかった。

「あの」
『どうしたの?そろそろ行かなきゃいけないよ』
「最後に、ひとつだけ聞きたいんです」
『何を?』

声が震えて聞こえる。頭ががんがんする。




「どこかでお会いしたこと、ありませんか」
『無いよ』
「そう、ですか」




会っているはずもないのにした問いかけに答えた声も、今の僕と同じように、震えてるような気がした。
『さあ、もうお行き。こっちのことは考えなくていいから』
急かす様に声が背中を押す。
目の奥の熱さとか頭が痛むのとか、そういうもの全部を連れて、僕は歩きだした。



















そして僕は歩いていく
(懐かしい声に背中を押されて。いつか辿り着くどこかへと)




















***
お察しの通り、元ネタはRADWIMPSの「オーダーメイド」です。
初めて聞いた時から書いてみたくて……理想と現実がだいぶ違う仕様になってしまいましたがorz
もうちょっと深いところまで描写したかったのですが、何をどうしたら深くなるのが分からないあたり勉強不足がにじみ出てますね……。

なにはともあれ。
ここまで見てくださりありがとうございました!

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日和の天国組とTOVのユーリさんが好きなあらゆる意味で変態な物体X
本名はフォルデモンド・アエーネス・REIKA・97779・ネフェルタリー
これを略すると「零架」になります
(※大嘘)

文を書いたり本を読んだりが大好き。
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