※AttentioN
・天国
・閻魔視点
・鬼男君が秘書になる前の話⇒秘書に抜擢された少し後、的流れ
・捏造オゥイェア
・全体的にグダグダなのは言うまでもなし
『いつになったら“初めまして”なんか繰り返さずに済むのやら、それがわからない』
時間は無限大だ。特にオレのような存在自体が無限のものにとっては、時間って概念すら意味を成さないものだと思っている。
その間、オレは何度「初めまして」「さよなら」と言っただろう。
そんな事はもう、忘れた。
It repeated. "Nice to meet you"
一応こんなオレでも大王な訳ですから、秘書は取りたいものです。毎日のように人が死ぬもんだから、さばききれなくてねぇ。せめて細々した雑務をやってくれるのがいたら助かるなぁって事で、会議か何かで特別に秘書を持つことがちょっと昔に決まった。
望むものは鬼だ。当然ここには罪人を除けば他の十王さんか獄卒鬼しかいないわけだから他を望むなんて無理だろうし、別に秘書になるなら鬼だろうが何だろうが構わないような感じであったから頓着はしなかった。
そういうわけでオレは秘書を持つことになったのだけれど、まぁそいつの脆い事。たかが五百年ちょっと過ごしただけで、変わらない事実を憂い自らの消滅を望むくらいだった。
……いや、「たかが」五百年というのは、語弊があるかも知れない。きっとその秘書にとっては、「たかが」なんて言える年数でなかったのだから。
そうなると新しい秘書を採るための書類なんかをまとめなきゃならなくて少々どころかものすごく面倒に思ったけど、オレがもう秘書を採らない、なーんて思う事はなかった。
何故って?そりゃ、忙しいもの。楽したいじゃない。年中無休みたいなもんなんだしさ。
ごめんなさい嘘つきました。
いや、そういう理由も勿論だけど、何よりオレはきっと一人ぼっちのこの空間に嫌気が差していたに違いないのだ。おかしいね、生まれて死んでからずっと一人じゃなかったか、オレは?
まぁそういうのはともかくとして、まだオレは秘書を採った訳です。多分今後もずっと出会いの挨拶をしなきゃならないかなぁと心の隅っこで思いながら。
でも次の子は割と持った方じゃないかな、と思い起こす。やっぱり無限に耐えられなくなったのに変わりはないのだけれど、よくもまぁ千年なんて「長い」間もってくれたね、と呟いてあげた。
千年?瞬きすれば終わってるよ、そんなもの。オレにとってはその程度だ。
けれど彼らにとってそれはきっと途方もなく長い時間なんだろう。だからそう無闇に縛り付けるのも如何なもんか、って事で一時期秘書を採るのを辞めた時期があった。
勿論そんなの、後々秘書になった彼らには関係のない事だ。だってオレの努力なんかそんなものだから。
て言うか鬼だって不老不死なんだし、無限じゃん要するにはさ。何を今更憂うなんて真似をするんだか。
そうごちてみても向こう側の気持ちがわかるわけないから、しょうがないかとこっちが妥協するに留めておいた。
うーん、異文化交流?って難しい。
まぁそういう訳で結局、オレが採った秘書の総数なんかそんなに多くはないのです。
その間何回「初めまして」「さよなら」と言ったかも多分、本気になって思い出せばさしたる数でもないんだろうと思わなくもない。
オレ本人に、思い出そうとする意志がないだけで。
ねぇ、こういう時は悲しむべきなのかなぁ。
最初の秘書がいなくなった時なんかは、やっと仲良くなれた気がしたのに錯覚だったの?なんて悲しんで哀しんで涙まで流したような記憶があるけど、二人目三人目と重ねていくうちに、なんかどうでもよくなった。
消えたければ消えればいい。就きたければ就けばいい。それだけでしょ?
(本当はきっと何処かで苦しいとか悲しいとか思うはずなんだけど、そう思ったり考えたりして涙を喚起するような器官をオレは長い時間の何処かに落としてきたらしい。だって秘書が消えてももう涙さえ流れはしないんだから)
そんな風にしばらく一人でいたオレは、今日が久々に楽しみだった。
楽しみ?違うな、なんとなく浮き足立たない気がするだけでそれが楽しみかどうかってのはわかんないし。
とにかくオレはきっと楽しみなんだ。そうじゃなかったとしてもそういう事にしておこう。
「うん、楽しみだ。久々に秘書採った気がする」
本当は多分楽しみなんかじゃない。
「どんな働きしてくれんのか、期待大だね」
本当はきっと期待なんかもしてない。
ただ、そんな短い間に初めましてさようならと言わずに済めば、それでいいかなって思ってる。これは確か。
前者に挙げた楽しみとか期待とかよりもずっと、確かだ。
書類提出とか手続きとか、面倒なんだもん。しょうがないじゃん。
「…ああ、ごめん。入っておいで」
危うく思考に沈みかけてそういえばこの引き戸の先に秘書になる子がいたんだったよと思い出して、声をかける。
扉が開いてその後に入ってきたのは。
眩しいくらいの金髪と、吊り上がった黒い目と、褐色の肌がやけに印象に残るような、若い姿の鬼。
動きも無駄がなくてきりっとしてて、真面目だなー、と思わせるような、そんな子だった。
ところで顔が不機嫌そうに見えるんだけど、それデフォルメ?
「今生で目にかかれたことを歓喜せよ、獄卒鬼。我こそはこの地獄を統括する十の裁判官が一人、閻魔大王也。……ふふー、どう?偉そうに見えたでしょ?まぁ実際偉いんだけどねぇ」
真面目っぽく挨拶したあとすぐ相好を崩してみると、気でも抜けたのか吊り上がった目が少し呆れたように細められた気がした。
ふーん、一応感情っぽいのは持ってるんだ。羨ましい事で。
「初めまして、新しい秘書君」
何度も繰り返した言葉をオレの口はなんの感慨もなく紡ぐ。
「そういう訳だから、宜しくぅ。何、あまり硬くなんなくていいよ。気楽にいこう気楽に。ね?」
「……」
まぁ期待はしてないんだけど。
そんな意味は含まないように言ってやると、相手は若干緊張したのを崩さないまま、宜しくお願いしますと深く礼をしてくれた。
本ッ当、真面目な子が来たみたいだなぁ。
それになんとなくいい印象だし。真面目とかそういうの抜きにしたとしても。
この子とは長く付き合いたいなぁ。そんな事を思わせるようなその子を見ながらオレは笑った。
(さて、次は何年持つのやら)
***
尊敬するT様の書かれていた出会い編が今にも頭に残っているので勢いで。
すみませんこんなやつです。許してください。orz
閻魔視点なんで鬼男君が何か呟いたとかそういうのは一切入ってないんだけれど、鬼男君は勘が鋭い子だと信じてるので(トゥメ)、閻魔に聞こえない声でって言うか心の中ってくらいのレベルで、哀しい奴だなって感じの事を呟いてます。辛辣です。そんな鬼男君大好きです。鬼男君になら刺されようが笑顔で罵られようがかまわない。←
こんな出会いでもいいけど、戦った末に閻魔が鬼男君を従わせるって感じでも大変いいと思います。て言うかむしろそういう流れがあってここに繋がった感じ?鬼男君を見たときの反応が初対面ぽいから違うかこれだと。
とにかく戦って従わせる⇒正式に秘書として契約する、の流れが好きでたまらんです。
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