過去作を若干訂正してみたもの。
ちなみにタイトルは「アンビバレンス」の意訳です。
※AttentioN
・微妙にグロい
・閻魔がキチガイ(これ重要)
・鬼男君が拘束されてる
・罵倒されてる
・なんかもうとにかくキチガイ
こういう天国がある意味で理想だったりします。
ただ鬼男くん虐め抜きたいだけかも知れませんが。
気分の沈みようが激しいんで勢いでやった。後悔は多分二日後くらいにする。(遅!
あんたの暴言は綺麗すぎて心臓が止まる。
大好きなんて言ってくれるな。本当は大嫌いなくせに。
愛してるなんて反吐が出る。本当は憎らしく思ってるんじゃないのか?
ああ、ああ、そんな風に優しくなんかしないでくれ。
こんな風に拘束してるのも殆ど会いに来ないで放置してるのも全部ぜんぶ赦してしまいたくなるから。
アンビバレンス
背中に当たる石壁の冷たさに、今日も夢から引きずり上げられた。
ぽたり、ぽたりと雫が落ちる音ばかりが耳に煩くてしょうがない。けど、遮断する気にすらなれないから放っておくことにした。
億劫だ。馬鹿ばかしい。手首足首にじゃらりと重い枷を見ながら一人ごちてみる。
あの野郎本当にやりやがったなんて当初は考えたものだけど、今はもうどうだってよかった。
時間の感覚がなさ過ぎて感情が磨耗していった末なのかも知れない。
ああ、でもだとしたらあの馬鹿で変態なあいつはどれくらい前からこんな虚しいところにも似た世界で人間を裁いてすごしてきたって言うんだろう。
「鬼男くん」
不意に奥の扉がぎしりと悲鳴をあげた。
続いて聞きなれた声が僕を呼ぶ。返事する気力もなくて黙ってると、伸びてきた白い手がするりと首に絡みついた。
「飼い犬は返事しないと駄目だって、教えたよねぇ?」
ゆっくり、ゆっくりと冷たい手が首を圧迫する感覚。
息が苦しいのだけどそれを解さない相手に対して、掠れた声で大王と呼んでやると、意外にもあっさりその手は首から離れてくれた。
器官が締め付けから開放されて貪欲に空気を求める。湿って粘つくこの場所の気持ちが悪い空気だろうと、生命維持のためには構わない、らしい。
「よくできました」
「……」
「今日もいい子にしてたね。オレ、嬉しいよ」
「……」
目の前に現れた暗がりから二つの赤がこっちを見る。
恐ろしいくらいに綺麗で冷たい、冥府が王の目。
白い手が、頬を這った。伸びた爪が頬を傷つけたか、ちりっとした痛みを感じる。
けど、そういうのに何か思うでもなかった。
「鬼男くん、綺麗だよぉ。食べてしまいたいくらい」
「……お好きにどうぞ」
「あはは、冗談に決まってるじゃん!いくらオレでも鬼食ったら腹下しちゃうよ。て言うか体に悪そうだから食いたくもないけど」
「そうですか」
「あぁ、でも血を舐めるくらいならいいかもね。だってホラ、君の血だって綺麗な赤だもの。綺麗な命の赤、だよ」
傷つけた頬をぺろりと、冷たいくせにねっとりした舌が舐めた。
近づいた吐息があまりにも濃い菊の香りに満ちていて、ただでさえ宜しくない気分が最悪になる。口の中がすっぱくなった。
「……ぅ、っ…」
「何だ。吐きそうなの?」
「……」
首を横に振るだけにとどめておく。何か食べた訳じゃないから戻すものも胃液だけとは言え、そういうところを誰かに見られたいと思うほど僕は嗜虐的な思考を持ち合わせてる訳じゃない。
の、だけど。
「吐いちゃえよ。別にいいでしょ、ここにはオレ以外に誰も来ないんだからさぁ」
けらけら笑いながら相手は、無理やりに口をこじ開けて指を突っ込んできた。
喉の奥の方まで冷たさに犯される。大嫌いな菊の香りが濃く胸に染みて、気分の悪さが絶頂にまで上った。
我慢は体によくないよ?なんて言われるまでもなく、すぐに焼け付く熱さが喉から口へ逆流してごふりと吐き出された。
「う、ぇっ…」
ああ、口の中が酸っぱい。
「鬼男くん、おなかの中綺麗なんだねぇ。もっとグロいもん吐くのかと思ってた」
こんなもんの何が綺麗なんだ。そう思うけど、咳き込みながらじゃ何も言えやしない。
「もっと、もっとそういう顔、見せてぇ」
吐いてるってのにいきなり口付けるものだから、奥から溢れるものをまた喉の方に押し込まれる。
けど菊の強い香りがまた腹の底から不快感を呼び寄せて喉の方までそいつを持ち上げてくるもんだから、正直熱した銅を流し込まれる苦行よりずっと苦しいんじゃないかってすら思えた。
そんな口付け長くされても嬉しくもなんともねぇよ、あほ。
「……げふ、…ッは、ぁ…はぁ……」
「ふふ、ははは、あはは、あはははは」
「…ッ…」
ごぷり、と口からどんどん酸っぱいのがあふれ出る。
それを見ながら、大王はケラケラ笑ってた。
ああ、全くもって腹立たしい。
「鬼男くん、まじ気持ち悪ぃ。ありえないよ君ホントに。最悪ー超さいてー」
「……」
最低なのはどっちだ、この馬鹿が。
そう、思うのだけど。
「まぁオレはそんな鬼男くんも、そうじゃない鬼男くんも全部、大好きだけどねぇ」
口の端を伝うその酸っぱさを舐めとって、そんな風に言うものだから。
結局僕は未だこの変態大王イカを憎めないままで、赦してばかりなのだ。
……否、これは赦しているのではなく。
もう、そういうのもどうでもいいくらい、好きでたまらないって事に、他ならないのだろうけど。
***
キチガイ閻魔。
こういう天国もある意味理想です。
なんか遣隋使と違って普通にキャッキャするよりもこういうドロッとした恋愛だとか切ないけど互いに好きとかそんなんばっかりです。仲悪くても萌え。
つか私はどこまで鬼男君を苛め抜けば気が済むのかと。
あー、あの人みたいな天国書きたいマジで!練習あるのみですね本当にorz
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