試験爆発しないかな……orz
※Attention
・天国
・鬼男視点(転生前くらい)
・ある話の伏線的な感じです
・シリア…ス…?
・ぐだぐだとしてます
・多分短いです。ネタレベル?orz
以上でも大丈夫でしたら続きからドウゾ!
『気持ちがどんどん、溢れてくるんです』
拝啓 閻魔大王
僕がいなくてもちゃんと仕事はしてますよね?大王のことだからいつものように天国へ遊びに行ったりセーラー服集めたりとあらゆる方法でサボってるんでしょうけど、あんまり同僚を煩わせちゃだめですよ。
そんな書きだしから始まった大王への手紙は、期間的に考えてこれが七つ目。
と、同時に、最後の手紙になるんじゃないだろうかと思う。
転生するって決まった日から一週間前。僕と大王がずっと、仕事でもプライベートでも大体は二人でいた時間を書きつづった手紙は、けれど全部大王に渡ることなんてなく。全部ご丁寧に通し番号なんかつけて、引き出しの奥の奥なんかにしまっていた。
一回ごとに大王に渡せばいちいちそんなものをつけなくてもいいのに、僕は自分が思う以上に不器用であるらしい。(通し番号だなんて、仕事で読んでもらう書類じゃあるまいし)
こんな机の奥すぎる奥なんかに隠したら、いくら大王でも分からないだろうに。なんて、自分の行動に笑いを堪えながらも、僕は仕事を終えたこの日、相変わらず手紙を書いている。
宛名は大王。だけど、きっと僕がこれを渡す事はないんだろう。
大体もうここにいる期間が今日くらいしかないって言うのにいきなりこんないっぺんに書きためた手紙なんか渡したら、大王はあからさまに嫌な顔をするんじゃないかって思う。僕の転生が決まったその時から、そういうことを匂わせるような行為を見せるたび、普段からそこまで顔に出さないはずの大王が殊更に嫌そうな態度を見せていたのが、今でも鮮明に思い出せる。
……って、何だそれ。明日すぐ転生するんじゃあるまいし。そんな過去すぎるような言い方しなくてもよかったよな。
そんな風に自分の表現に自分で呆れながら、便箋をゆっくりと己の文字で埋めていく。
「……」
けど、内容が内容だからか。まじめな顔で何やってるんだろうと思ったら、何故だかわからないけど笑えてしまった。
これは嬉しいから笑うんだろうか。それとも、苦笑いなんだろうか。自分の部屋に鏡やそれに近いものががないから今僕がどんな風に笑うのか分からないけど、もしかしたら自嘲のこもった笑みでも浮かべているのかも知れない。
今更こんな風に手紙であれこれ言うんじゃなくて、もっと大王といる時に、言いたいこととかを全部言っておけばよかったのに。
と、そんな風に言ったところでどうにかなるわけじゃないから仕方ないんだけど。大体僕のことだから、「転生するまでの期間を延ばしてやるから好き勝手伝えてこい」なんて言われても、いつものように仕事しろだのなんだのしか大王に言えないのは、わかりきってる。
素直になれない自分を、ものすごく呪いたい。
ただ素直にあれこれ言っても、結局はいつもと変わらないような気がしないでもない、とも思う。どうせ大王の事だから、僕の説教も言葉ものらりくらりと受け流すんだろうし。万が一好きですなんか言ったとしても、やっぱりいつものような、よく分からない感じで「俺も」って返すだけで、生娘よろしく頬を染めて慌てたりはしないんだろう。そんな風にされても気味悪いけど。
「……はぁ…」
溜め息がこぼれた。まだ便箋は半分くらい真っ白なのに、言葉がもう浮かばない。今までのとあわせたら多分七通目になるはずだから、もうちょっとまともで、かつ大王に伝えたい言葉を書こうとは思うんだけど。でもそうしたら、これ以上何を書くべきなんだろうか。
真面目に仕事しろ。それはもう書いた。て言うか毎回こういう書き出しで書いてる。
これからも頑張れ。ってのは、他人行儀で嫌いだから、思ってても書く気にはなれないし。
僕の事を忘れてくれ。なんて言うのはあまりに無責任だから書かない方がいいだろうと思う。逆の立場になった時そんなもの読んだら、僕だったら破り捨てそうだし。
貴方が好きでした。ってのももう書いた。過去形じゃないけど。
ずっと一緒にいたいです。ってわがままも実は書いてる。こんなにストレートにじゃないけど。て言うか転生した後に見つかったら意味がないし。
僕がいなくても、っていうくだりの文章も、本当はいけないんだけどちょっとだけ書いておいた。大王に限ってそんな事はないと思うけど、僕がいなくなってから抜け殻みたいにぼんやりされてもいけないだろうし。
だったら、何を書けばいいだろう。
秘書としての僕が大王の傍を離れなくてはいけない理不尽さとか、寂しさとか、残していく大王へどんな言葉をかけるべきか分からないからずっと黙っててごめんなさいとか、もう全部書ききった言葉ばっかりが頭の中をぐるぐると廻っては、溜め息といっしょに外へ出ていってしまった。
便箋は、相変わらず空白が半分くらい残っている。
この手紙は転生が決まった一週間前からずっと書いてるけど、本当はここに書いた以上に言いたい事が、まだまだあるはずなのに。
それとも僕は、思った以上に何も言おうと思わないんだろうか。もう大王に会えなくなるのに。
もう、会えなくなる。のに。
記憶のあるうちに会えるのは、明日で最後なのに。
「……いやいや、考えるな。何もできなくなるから。考えるな。大丈夫大丈夫、だいじょ…」
大丈夫。
な、わけない。
僕は今まで大王といっしょにいて、その間に今まで書きためてきた手紙の倍以上は言いたいことがあったはずなのにいざ書き出してみたら早々に言葉は尽きて、けれど今日の間にまとめておかなきゃ明日ここから僕は行かなければならないのだから、明日、明日までに大王に言いたかったこととかつたえたかったこととかそういうのを少しでも多く書かなきゃ、もし僕がいなくなった後でも大王がいつかこの手紙の束を見つけて読んでくれた時のために少しでも多く多くおおくおお、く
「…っ、う、ぅ…」
ぱたりぱたりと、文字が書かれてない便箋が濡れる。ああ、こんな濡れたら紙がふにゃっとなって文字書くどころじゃないのに、なのに、ぱたりぱたりと便箋が濡れる。ぱた、ぱたと落ちる滴で濡れていく。
折るのかお前って言われてもおかしくないくらいに、鉛筆を持つ力が強くなる。持つ手が震える。
頭の中で浮かべてた言葉が全部消えて、代わりに、ここに来た時のことなんかが過ぎ去っていった。
最初に出会った大王の、何だこいつ胡散臭ぇってばかりの作り笑いとか。
コーヒーの淹れ方をいちいち言われて、じゃあ自分で淹れろって言った時に、君のがいいって訳分からん理由で不貞腐れて、こっちも不機嫌になって。後でものすごく険悪だったぞって同僚に言われたときとか。
ある事をきっかけに本気で大王へ仕えようと思って体に刻んだ証とか。
天国に行こうとした悪ゴメスを説得しようとしたあの時とか。
地獄で特別強い亡者に殺されかけた時のこととか。
人道に行きたいとか駄々こねた大王を連れてこっそり混ざった夏祭りとか。
呆れる通り越していっそ笑えてしまった、あんな事とかこんな事とか。
そういうのがひとつひとつが浮かんでは消えて、消えた分だけ便箋を濡らしていった。
走馬灯とか言うんだろうか。それとはちょっと違う気もするけど、とにかくそういった、ずいぶん昔の細かいことなんかが頭の中で浮かんで消えて、便箋をぽたぽたと濡らした。
息をするのもくるしかった。僕だけしかいない部屋に、ひゅーひゅーと喘ぐような声だけがこだました。
「…」
これ以上便箋をぐしゃぐしゃにしたら本当に何も書けないと、机に向けていた目を暗い天井に向ける。
また目の奥が熱くなってきたけど、今度は何も溢れてこなかった。
これならと便箋に目を向けて、破らないように鉛筆で軽く、濡れた部分に線を引く。くしゃっと紙は波打ったけど書けないことはなさそうだった。
何を書こうかなんてのは、相変わらず決まってない。
けど、まだもう少しだけ「今日」が残ってるから、大王が呼びに来るまでに書いて、そしてまた引き出しの奥にでもしまっておこうと思う。(当てつけのように机に置いといても良かったけど)
それ以外に、僕が大王へ残していけるものは、きっとないだろうから。
「……」
なら、最後の最後までびっしりと、溢れてやまない分を書けるだけここに残していこう。
いつか大王が見てくれた時、僕が大王をこれだけ思っていたんだと、そういう証が伝わるように。
僕はこれだけ大王を思っていたんだと、自分自身の中に書きながら刻みつけるために。
ただ、「さよなら」とだけはどうしても書けそうになかったけど。
手紙
(たった数枚の中で、溢れすぎる気持ちを収められるはずはないのだけど、それでも)
***
鬼男君転生前のお話。
「Last Weekend」の伏線のようなイメージでした。(※「Last Weekend」はまだ公開していません)
鬼男君がどんな事を思いながら手紙を残したか、後々これとあわせて「Last Weekend」を見た時に少しでも伝わるのであれば幸いです。
て言うか、
次から私を空白の貴公子と呼んでくださいorz
あまりにも空白でごまかしすぎた感が否めなくて本当に…もうだめだ私(泣)
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