※Attention※
・現代パロ@天国
・季節はずれの大掃除
・↑べっ別に大晦日だからやってるとかじゃないんだからねっ!ただの部屋整理だかry
・閻魔には何か憑いているようです
・例に漏れずグダグダな可能性200%
以上のことが大丈夫でしたら追記からどうぞ~vv
『モテてる以前の問題だろ、それ……!』
その日は休日だというのに、部屋の外がガタガタと騒がしかった。
惰眠を貪っていた鬼男は始めこそ微かに眉を顰めて布団に潜り込む程度だったが、そうやって相変わらず眠さに任せて起きずにいた彼の背中に、どん、とひときわ大きな音が響いた。
如何に眠さへ溺れていた鬼男でも、心臓が飛び跳ねるくらいの騒音を外で成されては溜まったものではない。
煩いなこのやろう、などと悪態をつきながら起き上がり、寝癖のついた髪をあいた手で掻きながら鬼男は部屋の扉を開けた。
「……休みだってのに何やってんですかあんた」
「おや、おそようさん鬼男くん。何って、見てわかんないかな」
寝惚け眼で部屋から出てきた鬼男に、閻魔が持っている段ボールの箱を顎で示して問い返す。
それに暫くはぼんやりと視線を向けていた鬼男だったが、やがてあぁ、と何か思いついたように軽く手を打った。
「部屋の掃除ですか」
「ご名答。君には悪いと思ったんだけどねぇ、せっかくの休みだからやっとこうかと。ゴミの日も近いし」
「なんか大王って本当におかんみたいですね……」
「一応褒め言葉としてもらっとくよ。ところで君今日予定ある?」
流石に長い間段ボールを抱えあげたままだと腕が辛いらしく、閻魔はよいしょ、と一度床にそれをおろしてから改めて問いかけた。
それに何もない、と言う意思を込めて小さく首を横に振ると、にっこりと嬉しげな視線がよこされる。
「じゃ、手伝って?」
……嘘でも予定を入れるべきだったか。
聞いた瞬間そう思った鬼男だったが、閻魔が良かったーなどと肩を軽く揉みながら言うのを見て断れないとでも悟ったか、まぁいいですけど、と溜息混じりに呟いた。
「しかし」
遅めの朝食後に閻魔と他愛なく話しながら改めて彼の部屋の現状を目撃した鬼男は、思わず先の言葉を呑み込んだ。
とは言え、閻魔の私室はこの年代の男性にしてはシンプルだ。俗に言う「オタク」のような趣味を持たない様子の彼であるからそのような『グッズ』がないのは当然と言えばそうかも知れないが、それにしてもカレンダーくらいはつけておけよ、と言いたくなるくらいに壁には何も無いし、鬼男の部屋にさえある置き物の類すらも見当たらない。
ただ、本やノートと言った紙類は、気が遠くなるほど多かった。
「何ですか、この印刷所みたいな部屋」
「印刷所みたいなとは失礼なー。ちゃんと寝る場所とかもあるじゃん」
「いやそういう問題ではなく。装飾の類とか置かないんですか?」
「あー、それね。ちょっと考えたんだけど、ほらオレの部屋ってこの通りじゃん?置いても隠れるかなーって」
「それでも卓上カレンダーみたいな机のくらいは置けるでしょうに……」
全く、と呆れたように腕を組みなおし、鬼男はざっと部屋の中を一瞥した。
とりあえずは閻魔の指示に従うとして(大体このような迂闊に触ると取り返しのつかない事態を引き起こしそうな部屋のものなど手をつけたくないのが鬼男としては本音だが)、何をどのように片付ければよいのやら。
他人の部屋にも関わらず途方にくれかけながら、鬼男は閻魔が動くのを見ていた。
「君、力あるよね?さっき運んでた奴と同じような段ボールが二つくらいあるんだけどさ、表に出してもらっていい?」
「部屋の外ですか?それとも玄関前?」
「んー…今の時間はどうかなー。出来れば玄関に出しときたいけど、お隣さんに迷惑かかっちゃいけないしとりあえず部屋の外なら何処でもいいかな。ただ邪魔にならないようにお願いするよ」
「わかりました」
「じゃあ、はい」
返事をするや否や、すぐに段ボールのひとつが手渡される。ずしりと腕に重みが伝わるが、それでも自分の部屋の掃除でものを入れた段ボールよりはまだ軽い方だな、などと一人考えながら、鬼男は廊下を渡った。
そのまま普段あまり使われていない和室へと行くと、当然ながらあいていないふすまが目の前に立ちふさがり、鬼男は思わずつきかけた溜息を呑み込む。
しかし、足で開けるのはまずいだろうとでも思ったか、器用にバランスをとりながら片手でふすまを開けた。
「鬼男くーん」
「はいはい、もうちょっと待ってくださいねー」
出入りに邪魔にならないところへ荷物を置いているとすぐ、遠くのほうで閻魔の声がした。
それに適当な返事を寄越してから、少し早足で鬼男は閻魔の部屋へ戻った。
「次どれですか?」
「見てみてこれ懐かしいよー。オレの高校時代のアルバム」
「……って、早く持っていって欲しいから呼んだとかじゃねぇのかよ」
絶対掃除長続きしないタイプだ、と鬼男は怒りを通り越して呆れたが、閻魔がちょいちょいと手招きをするので仕方がないといわんばかりの様子で傍に寄った。
「掃除中でしょうが。道草食ってないでちゃんとしてくださいよ」
「今休憩中」
「早ッ!」
「それはそれとしてさぁ、これ」
床に何枚か散らばっていた紙切れをがさがさと移動させて鬼男が座るスペースを作ってやりながら、閻魔はアルバムの中の写真を示した。
その中では閻魔と、鬼男が顔を知らない数人の男達が、楽しそうに肩を組み笑っている。
「高校時代の友人ですか」
「そうそう。昔はよくこいつらとつるんで悪さばっかやってたなぁ。皆で授業抜け出したりとか。あとここじゃ言えないよーな事とか」
「何をやってたんだよあんたは……」
閻魔の発言に何ともいえないと目を細めた鬼男だったが、隣の横顔があまりにも柔らかく微笑っていたものだから。
それすら忘れて、同じように写真を眺めた。
と。
「……?」
目を移した写真の一枚に、何か靄のようなものが見えた。
それは高校のジャージを着た閻魔の背後へまとわりつくように、そこにある。
疲れ目だろうか。鬼男は目を擦ったが、改めて見直しても瞬きしても、靄のようなものは確かな存在感を持って写真の中の閻魔にまとわりついている。
鬼男の背を嫌な冷たさが走った。
「あ、あの、大王」
「何ぞや?」
「この写真なんですけど」
「どれ?……あぁー、これね。これちょうど修学旅行でサイクリングロード行ったとこだよ。森の中に休憩所があってさぁ、そこでダチに撮ってもらったんだよねー」
「いや、あの、そうではなく」
「?」
閻魔は怪訝そうな様子で鬼男を見たが、写真を示す鬼男の顔がどこか蒼白であるのを目の当たりにすると、成る程ね、と微かに唇へ笑みを浮かべた。
「それだけじゃないよ。こっちとこっちもそうだから」
「え、えぇ?!」
「いやー、何でか知らないけどさぁ、オレが写ってる写真ってどれも見事に心霊写真化するわけだよ。びっくりだよね本当にさ」
モテモテ?と閻魔はけらけら笑っていったが、鬼男は相変わらず青ざめた顔で写真を見ながら、消え入りそうな声で呟いた。
「モテモテ以前にあんたは一体何者なんだよ……」
思いを馳せようにも馳せられないような話。
(心霊写真を笑いながら見せられるなんざ初めてだ!!)
***
思いを馳せるのは閻魔だよね。何だろうこのずれたタイトル(;´∀`)
まぁそれなりに気に入ってるのでいいんですが。
鬼男くんは妹子ほどじゃなくても心霊系は苦手だと思う。いや全然動じなくてもいいんですが!
こういう事に関しては弟子男最強伝説を推して参りたい。むしろ弟子はホラー見ながら欠伸をかみ殺すレベルだと信じて疑わない。
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